めもりー

大容量ハードディスクがあれば膨大なデータがおさめられます。

おおきなクローゼットがあれば大量の物がおさめられます。

大量のデータがあらゆる場所から提供されます。

わたしをみろとうるさいのです。

大量の物があらゆる場所から提供されます。

わたしを買えとうるさいのです。

ところで私のあたまは高性能で、大量のデータがおさめられていますが、データの再生時間は有限です。

10年前の思い出にひたりながら昨日の晩御飯を思い出すことはできません。

私の手足は高価なロボット以上に器用で複雑な動きが可能ですが、体はひとつです。

服をいちにちに何回もきがえたりなんかしません。

包丁をにぎりながら万年筆で手紙をかくことはできません。

そんなにたくさんのデータも物もいらないのです。

かわいそうに、データがおおすぎて思い出すとこのない記憶がたくさんあります。

かわいそうに、ものがおおすぎて使われることもなくクローゼットで眠っています。

そもそも人間はいっしょうのあいだに自分をつかいきることができないくらいのハイスペックさなのです。

いろいろなものがもったいないですが、いちばんもったいないのは自分自身だと思うので、物にも思い出にも極力退場いただきます。

思い出はかなしい気持ちを呼び起こすのです。

思い出を再生するかわりに目の前のものをみていたいのです。

物が一大事勢力となると私を圧倒するのです。

たくさんのものを収集するかわりに、手足を動かしたいのです。

なんでもある状況が何をどうつかってよいのかわからない事態を引き起こします。

メモリーの無駄遣いです。

物も思い出も少ない方が鮮やかに活躍してくれます。

私はたくさんのソフトがはいったコンピューターより、サクサク必要最低限のソフトがうごいてくれるコンピューターが好きです。